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犬の腸リンパ管拡張症の食事管理


いい方法を探してるの!

 (この記事には追記がありますので、記事の最後をご確認ください)


 みなさん、こんにちは。

 清水です。

 今日は、犬の腸リンパ管拡張症の食事管理について。

 先日、飼い主様からある論文のような食事管理をしたいという問い合わせがありました。

 飼い主様の情報量の多さに、日々脱帽です。

 その論文は、国内の大学で行われた食事管理の報告で、腸リンパ管拡張症の犬に低脂肪の手作り食を与えた有効性に関する内容で、現在は一部の動物病院では実際に行われたりもしています。

 食事の脂肪を制限することは、プレドニゾロンの治療を行っても改善のなかった犬やプレドニゾロンの治療で改善してもその量を減らすと低アルブミン血症が再発してしまうような犬に有効だろうとする報告です。

 その食事は、鶏肉とポテト(またはごはん)のみで管理します。

 そのため、多くの栄養素の不足が生じる可能性があり、長期に用いるには限界があることもこの論文では述べられています。

 脂肪の制限の程度によりますが、少なくとも、この論文で推奨されている脂肪量は、犬の低脂肪や消化器疾患用の療法食(病院で処方される市販の病院食)より少ない量です。

 これは、AAFCO養分基準(ペットフードの基準)を下回るだけでなく、NRC(世界中の犬猫の栄養の研究のまとめ)のMR(最小要求量)も下回ります。

 もちろん、二つの食材のみで構成されるため、他のビタミンやミネラルも多く不足します。

 別の報告ですが、同じ病気で低脂肪の手作り食を続けたために、骨減少症になった犬の症例報告もあります。

 また、骨が弱くなるだけでなく、低カルシウム血症によって発作が生じることも考えられます。

 飼い主様の提示された論文では、この治療を始めるにあたっては、プレドニゾロンの治療の必要性も語られています。

 ステロイドの治療は、副作用の心配はするべきですが、使わないことでより症状を長引かせ、治りにくいあるいは治らない状況になる可能性もあるため、慎重に行わなければなりません。

 主治医の先生と、しっかり話し合って治療を行ってください。

 この病気は、腸リンパ管拡張症という腸のリンパ管が拡張し下痢を起こすという症状だけでなく、リンパ球プラズマ細胞性腸炎があるために炎症を抑える治療が必要なことが多いです。

 また、タンパク漏出性腸症という、腸からタンパク質が漏れ出ていき、アルブミンをはじめとしたタンパク質の不足が生じ、腹水がたまってお腹が膨れ、胸水がたまると呼吸が苦しくなる複雑な病気です。

 食べ物を消化吸収する腸が病気のために、通常よりも栄養の欠乏症は起こしやすいと考えてください。さらに、食べ物として入ってくる栄養素量が少なければ、より早期に欠乏症を起こしてしまうかもしれません。 

 治るものも治りにくくなります。

 食事管理に不安な点があれば、当院にご連絡ください。

 長期食事管理のご相談ももちろん、受け付けております。

 またはかかりつけの動物病院で、しっかり相談しましょう。



  清水



追記:2019年3月

 誤った食事管理によって副作用が生じます。

 栄養バランスを考慮しながら手作り食を行う場合、通常、サプリメントが必要です。

 特に炎症性腸疾患のような胃腸疾患では重要です。

 それぞれの犬猫に応じて栄養計算は行い、必要な食材量、サプリメント量を計算します。

 誤った食事管理によって副作用が生じないために、

  手作り食を計算する側は、計算ミスの無いように注意すること。

  手作り食を作って与える側は、勝手にサプリメントの量の変更等を行わないこと。

  定期的に犬猫をモニターすること(獣医師のチェックを受けること)です。

 食事管理は、病気の改善、悪化など、その時々で変更が必要です。

 そのままの食事管理でいいのか、獣医師に相談しましょう。



追記:2023年3月

脂質量の少ないフード(低脂肪食)を買いたくても、パッケージの表示を見ただけでは脂質量が多いか少ないかわからない場合も多いため、乾物あたりの量にして比較する方法について説明した動画です。


飼い主さんが自ら作る手作り食ではなく、市販のペットフード(手作り食のような製品も)についての内容ですが、脂質についても少し触れていますので、興味のある方はご覧ください。

日本語の字幕も対応しております。字幕の設定をしてご覧ください。



こちらは、エネルギー量あたりでフードの脂質量を比較する方法について説明した動画です。

脂質と細胞膜の関係についても少し説明しています。

脂質に興味を持って下さるとうれしいです。



参考

Okanishi H. et al. The clinical efficacy of dietary fat restriction in treatment of dogs with intestinal lymphangiectasia. J Vet Intern Med. 2014. 28: 809-17.


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